最近ちょくちょく聞かれるので、私がしているこのバブルった腕時計について書いておきます。
いまどきには似つかわしくないようなこの腕時計。正真正銘、亡くなった父親がしていたものです。これには少々長い話があります。
父親が若かれしころ自動車で独立を目指します。貧乏だったようで、独立して最初に自分へのご褒美としてローレックスの時計を買いたいというのが夢だったそうです。50年(すげー、半世紀や)も前の話ですから、ローレックスは超高級時計。当時は本当に一部の人しかしていません。大病院の先生とか、大大企業の社長さんとか。たぶん当時の金額で100万円。でも、国産の超高級車のクラウンが100万円の時代ですから、いまならレクサス並み。独立して数年たって、念願のコンビ(?、シルバーのチェーンの真ん中がゴールドになっているタイプ)を購入しました。
子供のころに、酔っ払うと必ずローレックスの自慢が始まりました。戦時中に潜水艦が沈没して何年かたって引き上げられたらローレックスは動いていたという話。機械部分のネジがプラスマイナスでなくて、星型(?)という話。こんな話をしている時は上機嫌でした。
月日がたち1990年ごろ。ふっと気づくと、みんなローレックスをしていることに気づきます。そして父親は独立した時に買ったローレックスを40年してました。昔は大病院・・大大企業・・・、だったのに。酔っ払うと、昔の自慢話が逆転して、誰でもしてる・・・ぶつぶつ・・・・ぶつぶつ・・・・。
この酔っ払った時の愚痴を聞きたくなくて、母親と私で気に入るローレックス(それでも、ローレックスだった。他にも超高級時計はありますが、ぜんぜん知らなくて。)買ってきてくれと懇願しました。最初は遠慮していた父親ですが、そのうち思い腰を上げてお店に行きます。
帰ってきたらバブルったローレックスを買ってきました。しかし、2-3日たってちょっと様子がおかしいことに気づきます。母親と原因を探ると、一番気に入ったタイプは在庫が無く、それよりもちょっと“きらめき”が少ないタイプの在庫を値切って買ってきたらしいのです。もう社長も私に譲っていたので遠慮した・・・?
思わず、「キャンセル料払ってでも、一番気に入った時計を買って来い!!!!!!!!」。酔っ払った時の愚痴を聞くのがいやで買うように言ったのに、弩高いのを買って、それでも愚痴を聞かされたのでは溜まったものではありません。
翌日、うちの親父は子供のようなニコニコ顔で帰ってきました。
バブルの時代ですから、今だったら考えられません。本当に。