なんと、こんな大きなお題目で卓話を行う羽目になりました。その時のレジュメを付けておきますが、皆さんの反応としては
GMのナショナルシティーラインズの話が一番受けていたようです。
これはGMやファイヤストーンなどの自動車関連大企業が資金を出して、全米中の鉄道会社や地下鉄会社を次々と買収し、そのほとんどをバス事業に転換を計ったと言うものです。効率がいいからという理由ということですが、結局はアメリカ全土の公共輸送手段を破壊し、輸送手段を自動車産業の独占にしてしまいました。横暴な”資本主義”を現している物凄い話ですね。
とりあえず、終わってほっとしました。
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GMが破綻した理由
I.GMの歴史
1903年ビュイック・モーター
1904年ウィリアム・C・デュラント社長就任
1908年オールズモービル買収
1909年キャデラック、ポンティアック買収
1917年シボレーと合併
1920年アルフレッド・スローン社長就任
商品方針「どんな予算でも、どんな目的でも」
巧妙なマーケティング(フルラインアップ体制)とスタイリング戦略(モデルチェンジ導入)、金融サービスの提供
フォード 1車種を世界中で生産
GM 地域ごとに多種多様な車種の供給
1925年フォード日本進出
1927-1941年 日本ゼネラルモータース
アジア向けノックダウン生産と国内販売
1936-1950年 ナショナル・シティ・ラインズ
45都市100以上の路面電車会社・鉄道会社を買収し、バス運送に置換
アメリカ路面電車スキャンダルと呼ばれる
・・・絶頂期・・・
1950年代 アメリカ最大企業
1953年社長チャールズ・ウィルソンがアイゼンハワー政権の国防長官に就任
1955年 アメリカ初の10億ドルの純利益
・・・凋落の気配・・・
1970年代 オイルショック 小型車化
長期的なアメリカ国内でのシェア低下、高い利益率
コンパクトカー・ハイブリッドカーには目もくれず、フルサイズSUV・ピックアップトラックに集中
・・・悪化・・・
2001年アメリカ同時多発テロ後、業績は急激に悪化
2005年 赤字105億ドル、2006年 赤字20億ドル、2007年 赤字388億ドル
2008年販売台数世界一をトヨタに譲る
2009年6月1日 連邦破産法第11章申請 負債総額1,728億ドル(約17兆円)製造業としては世界最大の負債総額
II.なぜGMは倒産したのか
A)ピータードラッカー『会社という概念』(1946年)
GMが新進気鋭の経営学者 ドラッカーに自社分析を依頼
GM成功要因を分権化にあると結論
2001年事業部制による垂直的な分権化(シボレー、キャデラック・・・)
2002年管理職と現場を完全に分ける水平的な分権化
個人の能力やリーダーシップを十分に発揮させる組織運営がマネジメント
そのためには分権化は不可欠
それを踏まえて3つの提言
1.今のやり方を変えるイノベーションの必要性
2.巨大化したシボレー事業部を分離独立
3.多くの権限を現場に与えること
残念ながら「GMは世界一なのだから、批判はもってのほか」・・・上層部の拒否
消費者運動家への探偵による尾行・・・・上層部の承認なしに自動的に行われた
各社のこだわり
BMW「エンジンメーカー」航空機エンジンメーカー、4サイクルエンジン発明
“運転する歓び”→ エフィシェント・ダイナミックス
一滴の燃料から最大限の出力を
モーターでなく水素を燃料とする内燃焼機関
ダイムラー「自動車を発明したメーカー」“最善か、無か”
トヨタ「1950年の経営危機」
GM 「GMは世界一」
B)野中郁次郎 一橋大学名誉教授
ロジャースミス 1981-1990 GM会長との面談
野中氏にGMの戦略を自信に満ちた口調でよどみなく語った
1.日本車に対抗するサターンプロジェクトの立ち上げ
2.トヨタとの合弁企業でのカイゼンノウハウの摂取
3.ロボットによる自動車生産を完全自動化する未来工場の設立
論理的には正しい戦略だが、実行が何一つ伴わなず
1.サターンプロジェクトは利益率の高い車両へ投資が集中
2.カイゼンノウハウを取得した人間が活用されず
3.労働組合との軋轢によりしりつぼみ
リーダーの育成
座額を中心とした学校や企業内の研修だけでは育たない。
リーダーの6つの能力
1.社会や人々に歓迎される未来を創出する「善い」目的を設定する能力
2.知識や知恵は人と人の間で生まれるので、その場をタイムリーに設ける能力
3.本質を直感的に見抜く能力
4.直感的に見抜いた本質をコンセプトに転換する能力
5.コンセプトを物語にして、それを周囲に語って説得する能力
6.実践を通して組織の中に広げ、伝承していく能力
“日本の多くの企業が伝統的に取り組んできた経営”である
III.この2人の研究を踏まえて共通すること
日本車の進出や経済環境、または年金医療債務などの外部要因を倒産に至った原因ではない。
企業の発展には大切なこと
スタッフ全員の能力の発揮
トップの謙虚さ
トップからスタッフに至る全員のベクトルの一致
Rotarian 4つのテスト
I.真実かどうか
II.みんなに公平か
III.好意と友情を深めるか
IV.みんなのためになるか